睡眠不足と自律神経の関係

- update更新日 : 2021年03月29日

睡眠不足は自律神経の大敵!!

~ なぜ、「これ」は健康にいいのか?小林弘幸著より抜粋 ~

睡眠不足がどれほど自律神経のバランスを崩し、それが体の「能力」をどれほど低下させるのか、おもしろい実験結果があるのでご紹介いたします。

それは、睡眠不足のときに鍼治療をしたら、効果はどのように変化するかを調べるというものです。

もちろん、この実験に先立って、睡眠が足りているときに鍼治療を行い、体にどのような効果をもたらすのかも調べました。

鍼治療を受けたことのある人はご存じだと思いますが、鍼を打たれるとほとんどの人が、体が暖かくなるのを感じます。

なかには気持ちよくなって寝てしまう人もいます。このとき体温を測ると、実際に上昇していることがわかりました。

体温を上げるのは副交感神経の働きなので、こうした反応は予想されていたことですが、自律神経を計測したところ、やはり鍼治療には副交感神経を上げる効果がありました。

ところが睡眠不足だと、鍼を打っても副交感神経は上がってきませんでした。

鍼治療が痛みの軽減に効果があることは、ある程度認められていることですが、なぜ鍼を打つと痛みが軽減されるのか、そしてその効果になぜばらつきがあるのか、くわしいメカニズムはわかっていませんでした。

でも、鍼治療で痛みが軽減されるのは、副交感神経が上がることによって、血流が改善されるためだとすれば、なぜ治療効果にばらつきがあるのかも説明できます。

睡眠不足だと鍼を打っても副交感神経が上がらないからです。

つまり、睡眠不足の人や、極端に自律神経のバランスが悪く副交感神経の反応が悪い人は、鍼治療を受けても副交感神経が上がらないので効果も現れない、というわけです。

睡眠不足とは覚醒過剰であり、交感神経優位の緊張状態が長いという事

なぜ睡眠不足だと副交感神経が上がらないのか。

自律神経には日内変動があり、ふつうは夕方から夜にかけて副交感神経のレベルがあがり、やや副交感神経優位な状態になります。

ところが、徹夜で仕事をするなど本来なら副交感神経が優位になる時間帯に交感神経を刺激することばかりしてしまうと、副交感神経が上がるタイミングを失ったまま交感神経が上がる朝の時間帯に突入してしまうため、何をしても副交感神経があがらない状態になってしまうのです。

こうした状態では、いくら鍼を打っても副交感神経が上がってこないので、治療効果もなくなってしまいます。

つまり、睡眠不足だとどんなに上手な鍼灸師の鍼治療を受けても効果はほとんど望めないということです。

睡眠不足は副交感神経のレベルを低下させ、自律神経のバランスを悪くさせます。 自律神経のバランスが崩れると、血流が悪くなるので身体機能が低下します。

ですから鍼治療に限らず、「どんな医学的治療を受けるときでも、睡眠不足だとその効果は半減してしまう」ということです。

自律神経のバランスの乱れによる血流悪化の影響は全身に及ぶので、単に筋肉の動きを悪くするだけでなく、脳の活性化も落とすことになるからです。

長時間寝ないで勉強や仕事をしていると能率が悪くなるのは、みなさんも経験上、ご存知だと思いますが、あれは単に疲労するからではなく、血流の低下によって脳の機能が低下するからなのです。

事実、パイロットなどのような仕事に就いている人達は、きちんとした睡眠をとることが業務として義務付けられています。

海外での大きな大会やトーナメントでスポーツ選手がなかなか能力を発揮しきれないのも、実は「時差」による睡眠不足と自律神経の乱れが影響しています。

運動能力も、頭脳も、体の治癒能力も、私たちの心身に関わる能力すべてにおいて本来の実力を出しきるためには、まず最低限の条件として充分な睡眠をとっておくことが必要だということです。